バスケット部の顧問と生徒の関係改善奮闘記
2013/01/14
大阪高2のバスケット部員の自殺によって多くのマスコミでは顧問の体罰について報道されています。
部活の顧問と生徒の問題については、私の娘が中学生の時にも経験しています。
2006年ですが問題解決のために何度も学校に行きました。
その経験から、部活の中では顧問の先生のやり方に他の先生や親は口を出しにくい。
なぜなら、部活の顧問というのは仕事ではなく、先生が自主的にやっている。部活の顧問をやってくれる先生がいないと部活動ができないのです。
したがって、顧問が「そんなに文句があるなら顧問を辞めます」と言われると生徒が困るので親は何も言えないのです。
2006年当時はそうでした。
そのために部活は密室化しやすく顧問の私有物になりやすい。
以下は、2006年10月16日から10月24日まで楽天ブログ「手塚利男の組織風土改革支援日記」で書いた内容です。
長文ですが、お読みください。
私の娘が中学生の時、部活でバスケットボールをやっていた時のことです。
中3のときに部活の顧問(先生)と深刻な対立関係になりました。
対立関係と言っても、対等な対立ではなく、圧倒的に先生が優位な立場での対立。
部活の顧問が生徒とのコミュニケーションが上手く取れなくなったと感じた顧問が、「怒らないから、自分に問題や言いたいことがあるなら正直にノートに書いてほしい」と部員に指示しました。
私の娘も含めて3年生部員全員が普段から不満に思っていることなど正直書いて提出しましたが、怒らないと言った約束を破り「自分に対して不満があるなら、指導できない」として、3年生全員を練習に入れないという態度に出たのです。
しばらくして騒ぎが大きくなって私たち親も知ることとなりました。
私たち夫婦も含めて3年生部員の親が集まり学校に行き、校長先生やその顧問にも会って話を聞きました。
部活の顧問は生徒たちの自分への不満がある間はこれ以上続けられなという話は変わりませんでした。
今、顧問に辞められたら部活が出来なくなり娘たちや関係のない1年生も困ってしまうと考え、妥協点を探しました。
娘たちも、「部活そのものが嫌になったわけではない、できれば続けたい」という気持ちも確認。
そこで考えた案は、一度、3年生全員退部し、続けたい人だけが再入する。本当は生徒だけの問題ではなく、顧問の言動にも改善していただきたいことはありましたが・・。
一部の生徒を除いて私の娘も再入部。これで元の部活に戻ると思いました。
しばらく様子をみていましたが、どうも、様子が変で、娘も元気がありません。
後で再入部した3年生が練習から外されているらしいということがわかりました。
どうなっているんだ?
本当に再入部した3年生だけが練習から外されているのか現場を確認しようとなりました。
3年生女子部員のお父さんやお母さんたちとも相談し、練習している体育館に行ってみようということになりました。
但し、練習を見に行くといっても平日ですので行ける人は限られています。私は、仕事の調整をしてできるだけ多く行くことにしました。
体育館に行ってみると確かに再入部組は体育館の隅の方に固まって練習らしいことをやっていますが、明らかに2年生たちとは違いました。
下級生である2年生と、顧問に不満的なことを書かなかった一部の3年生は体育館の真ん中で練習し、不満を書いた再入部組は片隅にいるという不自然な風景でした。
顧問は三年生再入部組には声もかけず、見もしない。
無視しているのか?
たまたまその日だけかと思いましたが、私が見た光景は、その日だけではなくしばらく続きました。
再入部組の様子を見るというより顧問の行動を監視しているような感じでした。後になって反省したことですが、顧問と親とも対立関係になっていきました。
土日になると他校との練習試合などをやりますが、その時は、再入部組は試合メンバーから外されていました。
再入部組はそれまでは主力メンバーでしたので、明らかに意図的に外していることが分りました。
その状況はしばらく変わりませんでしたので何人かの親と一緒にその顧問に会いに行きました。
「顧問はどう考えてそのようにしているのか?」
「あの生徒たちのヤル気が見えない。ヤル気が見えるまで待っているんです」と返ってきました。
なるほど、それも理由なんだと思いました。
しかし、一ヶ月経っても二ヶ月経っても同じ状態が続き、体育館に入らずに外練習がメインの時もありました。
「ヤル気が見えるまで待っている」というよりは無視している状態で、「辞めるまで待っている」と思ったほうがいいように見えました。
私からみるとその顧問のやりたい放題というように見えました。
その間、顧問だけではなく、校長先生や、副校長先生、他の先生とも解決策を話し合っていきました。
再入部組にも問題はありました。元々、再入部組の生徒たちはどちらかというと技術はあるがファイトが前面に出る性格ではない部員が多かった。
普段から顧問に対しても口に出して言いたいことを言っていればこのようなことは起きなかったと思いました。
このままでは状況は変わらないと思い、再入部組の部員たちにも働きかけようと考えました。
私は娘に「3年生のみんなにお父さんから話したいから集めてくれるかな?」と言いました。
娘は「良いよ」と言ってくれました。
金八先生のように出来ないかと考えたのです。
「お前たちもヤル気を示せ!部活が好きなんだろう!」と一発言ってやろうと思ったのです。
子供の事となるとパワーが出るものです。
娘に再入部組を集めてもらい、放課後、学校に行きました。
家に帰る生徒、これから部活に行こうとしている生徒、などで廊下などは生徒であふれていました。
校長先生に許可を取ろうとしましたが外出中でした。
代わりに副校長先生に目的を話し許可を得ようとしました。が、「困ります」と言われてしまいました。
そりゃそうです。
しかし、ここまできたら引き下がれません。
「分りました」と言ってそのまま再入部組がいる教室に行きました。
教室に入りました。
みんなは私の顔を知っています。
今回の出来事から練習を見に行きましたし、目の前の生徒が小学生のときから妻と試合の応援に行っていたからです。
一斉にこちらを見ました。
緊張の一瞬です。
事前に用意した「再入部組への手紙」を手に持ちながら、話し始めました。
「部活を辞める気がないんなら思い切ってやろうよ」
「みんなは部活が好きなんだろう。好きなら、顧問への不満もあるだろうけど、我慢してはどうか」
「この機会は二度と返ってこない。後悔しないようにしてほしい」
「みんなの言い分も聞くよ」
「校長先生も、親も、みんなで見守っている」
「顧問も変わろうとしている」
「夏の最後の大会まで数ヶ月もない。もう一度気を取り戻してやってみないか」
など、など、他に何を言ったのかよく思い出せないくらい話したように思います。
ほとんど手ごたえもなく教室を出ました。
俺って何をやっているんだろうなあと思いました。
学園ドラマのようにはいかないもんです。あれはやっぱりテレビの世界です。
その後、体育館での練習に足を運び、練習試合にも応援に行きました。
私と妻だけではなく、多くのお父さんやお母さんも一緒です。
その間、校長先生や顧問の先生とも話し合いを続けていきました。
教育委員会に手紙を出した親もいました。
学校内でも校長先生と顧問の間でも話し合いがあったようです。
その間に娘が「過呼吸症候群(かこきゅうしょうこうぐん)」という発作をおこすようになりました。
過呼吸症候群は心因性ストレスが原因となって発作を起こすそうです。
娘は問題が起こる前まではチームのまとめみたいなことをやっていましたので、特に、強く責任を感じていたのではないかと思います。
ひょっとしたら、親が口を出しすぎてのプレッシャーだったかもしれません。
夏の最後の大会まで残すところ2~3ヶ月になったころ、少し変化が見られました。
再入部組も少しずつ練習試合にも出るようになったのです。
校長先生から顧問に対して強い指導があったのか?
但し、再入部組とそうでない生徒をはっきりと分けたチーム編成をしておりました。
試合に出ても、他の選手には細かい指導やアドバイスをしますが、再入部組は自主的?にやらせているようでした。
ほとんど、アドバイスや指導はありません。
親ばかですからどうしても偏った見方をしてしまいますが、そのように見えました。
顧問が声をかけない分、親たちが大声で応援しました。
顧問の行動に抗議するような気持ちで応援しました。
しかし、ようやくコートに立てるところまできたわけですから、善しとしなければと思いました。
そのまま何事もなく大会に向かって行ってくれればと願いました。
ついに再入部組にとって最後の夏の大会の当日を迎えました。
娘たちは、少し緊張もしながらも、以前のように明るくキャッキャしています。
選手として復活してから何回かの練習試合をやってきました。
成績はあまり良くありませんでしたので、親としては悔いのない試合をして欲しいと願いました。
顧問の先生も、前よりも声をかけてくれるようになってきたようです。
応援席を見渡すと選手の親や兄弟、校長先生、担任の先生も応援にきている。
校長先生も各選手の親たちもお互いに話をしませんが「ようやくここまで来た」という、お互いに感じるものがありました。
再入部組の中には部活が好きで続けた生徒もいれば、親から「部活を止めると高校受験時の内申書に響くから絶対に続けなさい!」と言われたので続けてきた部員もいました。
その部員に対しても仲間として励ましあいながらやってきたようです。
第一試合、スターティングメンバーは再入部組主体のメンバーです。
ゲーム中、親から反強制的にやらされていた部員も3ポイントシュートを決めるなど、皆のびのびとやっています。
“何とか良い試合を”とドキドキしながら見ていたのは私たちだけなのかと思うほどでした。
4クオーターまで再入部組主体でやり、勝利することができました。
生徒たちも大喜びです。
ほとんどの生徒が泣いています。
私も不覚にも泣いてしまいました。
妻も、他のお父さん、お母さんも泣いています。
校長先生とも抱き合う?まではいきませんでしたが、思わず「よかった!ありがとうございました」と握手してしまいました。
ふと、相手のチームを見ると向こうも泣いています。相手のチームも今日の試合を迎えるまでに色々なことがあったのだろうなあと思いました。
一段落したところで、毎年の恒例になっている「3年生だけの記念写真」を撮りました。
とても輝いています。
この後、決勝戦まで行った・・・・はやっぱり映画の世界です。
二回戦も再入部組主体で戦いましたが負けました。
選手たちも、親も、先生も、私も、妻も、泣きはしましたが、明日に繋がるような涙でした。
顧問の先生とは色々ありましたが、やはり、感謝しなければなりません。
そして、多くのことを学ばせていただいた娘たちにも・・・。
私の娘は小学生の時から地域のミニバスケットボールクラブに入れていただいてやっていましたので、その時から多くの試合に応援に行きました。
子供たちが純粋に一生懸命にプレーしている姿はとても素敵です。
その時に、思いました。
もっと、他のお父さんやお母さんも自分の子供のプレーを見てやったら良いのに・・・と。
上手くても、下手でも・・・・。
そして、今回の件でも、お父さんたちも学校へ行ってほしいと思いました。
なぜなら、顧問にまかせっきりだと部活は密室化し、顧問の私物化しやすくなるように思うからです。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
手塚利男
カテゴリ:ほっと一息