明治維新直後、政府と国民の組織風土の問題を指摘した人がいた
2013/08/24
NHKの大河ドラマ「八重の桜」を毎週日曜日の夜、妻と楽しんで観ています。
東北出身の私には薩長軍が会津を攻めるシーンには複雑な思いで観ました。
戊申戦争後、明治維新によって新しい国づくりが始まりますが、同じ時期に当時大ベストセラーとなった本が発行されています。
それは福沢諭吉の「学問のすゝめ」です。
たまたまですが、風土改革支援をしている企業でマネジメントクラスに対して推薦している図書に福沢諭吉の「学問のすゝめ」がありました。
“天は人の上に人を造らず、天の下に人を造らず”は誰でも知っていると思いますが・・。
私も、「学問のすゝめ」と“天は人の上に人を造らず、天の下に人を造らず”は知っていましたが、しかし、恥ずかしながら今まで読んだことはありませんでした。
お客様のところで推薦されている本ですので読んでみました。
しかし、文語体で書かれているために難しくて頭に入らず、“食べ物をかまずにのどに流し込むような感じ”でページをめくっていきました。
そういう読み方をしたので、何となく後味も悪く、何度も読み直してみようと思いながら日が経ってしまいました。
ところが、運悪くというか、運よくというか、左足のアキレス腱を切ってしまい手術・入院ということになってしまい、たっぷり時間が出来ましたので、これ幸いともう一度読んでみました。
時間をかければと思って再び手に取ってみましたが、やはり、文語体はやっぱり理解できず、諦め、その代り退院後に現代語訳「学問のすゝめ」(訳者齋藤孝・ちくま新書)を購入し、読むことにしました。
あらためて読んでみて、ビックリ、今の政府、国民にも当てあまる指摘がたくさんありました。
当時ベストセラーになったのも納得です。
「学問のすゝめ」は明治5年から明治7年にかけて全17編に分けて分冊されたとのことです。
その中で、特に、明治7年に出版したものに政府と国民に対して組織風土の問題を指摘していることに注目しました。
明治新政府ができて5年後には出版されていることにも驚きです。
「学問のすゝめ」では「組織風土」の代わりに「気風」という言葉を使っていますが、同じ意味だと理解しました。
たくさんの指摘をしていますが、以下のようなことを指摘しています。
明治維新以来、政府が色々な施策を打つが効果がなかった、その原因が「気風」にある。その気風は明治維新前に日本全国の人民は、長い間、専制政治に苦しめられて、それぞれ心に思うことを自由に表現できなかった。その影響でごまかしや不誠実な行いが日常の習慣になる。
その影響が明治維新後の新政府と国民の関係に影響し、政府は国民の悪しき習慣を改めさせようと権威をかさにいばり、おどし、叱りつけ、ムリヤリに人民を誠実にしようとしたが、かえって人民を不誠実に導くようになった。
その結果、政府は専制抑圧の気風となり、国民は頑迷で卑屈な気風となり、この気風が明治維新以来、政府が色々な施策を打つが効果が出なかった原因と指摘しています。
この気風と同じ組織風土を持つ企業はいまでも多くあると思います。
かつて私が働いていた会社もそれに近い風土がありました。
この気風をどうすれば変えられるかを本著では示唆していますので、興味のある人は、お読みください。
手塚利男
★「ギスギスした職場はなぜ変わらないのか」(日経ビジネス人文庫)2013年5月
日経まナビ!「今週のイチ押し書籍」で紹介されています。
★手塚利男の『ギスギスした職場はなぜ変わらないのか』(Nanaブックス)
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4901491873/
★通信教育用テキスト本『活気あるチームのつくり方』手塚利男/アイ・イー・シー
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カテゴリ:風土改革支援現場に立って思うこと